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資料・情報

海外情報

ここでは、米国LAM Foundationのニュースレターから世界中のLAM患者の質問に、LAMに関わる内科医が回答されるコーナーより翻訳したものをご紹介しています。 LAM会議に出席できない沢山のLAMに罹った女性がいます。心ある医師たちが彼女たちの質問に思慮深く参考になる答えを出してくれます。

※LAM Foudation Mrs Sue Byrnes ご厚意から翻訳掲載の許可を戴きました。
  監修・付記 井上義一先生 皆様のご協力に心よりお礼申し上げます。
  出典: LAM Foundation刊行‘Journeys‘ 第8版 2002年夏号 第9版 2003年夏号


<お願い>
提供された情報に関しては、必ずしもすべての方にあてはまるとは限りません。 情報の利用にあたっては、利用者の判断または主治医にご相談ください。 万一情報の利用により不利益が生じても、当方は責任は負えないことをご了解下さい。


治療について

Q. 私はシンガポール出身で、十代後半にLAMと診断された私の友達のために最新の情報を探しています。彼女は片方の腎臓にかなり大きな嚢胞があります。この6ヶ月の間、彼女の肺機能は悪化しています。彼女は3週間入院し、その間に肺に溜まった液を抜いてもらいました。先生方は嚢胞の成長を縮小するために動脈を閉じる処置をしました。彼女は胸部にも痛みを感じていました。LAM患者の痛みをやわらげるのにアメリカでよく使われている薬はありますか?どこにいてもこの病気を治せるようになりますか?

A. 肺にLAMの病変があり、片方の腎臓に「嚢胞」があると診断されたあなたのお友達についての情報を再検討してみました。彼女が最近、胸部の外科手術を受けたのは乳び胸(胸部の乳び液のたまった状態)が見つかったからだと推定します。この病気の進行は女性ホルモンであるエストロゲンに作用されると考えられています。したがって治療の主な方法はプロゲステロン療法で、月に一回400mgのデポプロベラ(Depo-Provera)を筋肉注射する方法と、経口薬で一日に一回10〜20mgのプロベラ(Provera)を服用する方法などがあります。他にも抗エストロゲンホルモン療法はあります。彼女は入院中に、胸にたまった乳び液に対して再発防止のために適切な処置が取られたと思います。胸の痛みは最近の外科手術によるものかもしれません。時間とともにこの痛みが良くならないならば胸部CTスキャンで役に立つ情報が分かるでしょう。腎臓の「嚢胞」は正確には嚢胞でないかもしれません。LAM患者の約半数の女性に腎臓に血管筋脂肪腫と呼ばれる良性腫瘍がみられます。超音波やCT検査でこの問題は明らかになるはずです。彼女の状態の重大さによって、治療に肺移植を検討するほうがよいかもしれません。肺移植についてシンガポールではどのような状況か私には分かりません。彼女の主治医にいつでも私に連絡を取ってもらっていいですよ。彼女はあなたのような思いやりのある友達をもって幸運な人ですね。
(回答者: Jay Ryu / 医学博士、ミネソタ州 Mayoクリニック)

肺機能検査について

Q.私はマレーシアに住んでいるLAM患者です。今年、検査を受けて再評価されました。CTスキャンでは非常に広範囲にわたる病変が確認されました。私の肺機能検査の結果は次のとおりです。FVC(努力肺活量)=2.49(予測値の83%)、FEV1(1秒量)=1.07(予測値の39%)、FEV1/FVC=43%、VC=2.55(予測値の85%)、TLC(全肺気量)=4.02(予測値の90%)、RV=1.47(予測値の106%)、DLCO(肺拡機能)=2.5(予測値の42%)
私はいつ在宅酸素療法が必要となるでしょうか?酸素濃縮器は必要ですか?

A.FEV1の値が予測される標準値の約30%に達したときに、私はLAMの患者さんが閉塞性障害が強くなったことから、肺移植手続きの開始を勧めてきました。肺移植はその段階では必要でないかもしれません。しかし世界中の多くの移植センターでは、肺移植のための待機期間はかなり長く、時には数年になることもあります。充実し、組織のしっかりした肺移植制度のあるもっとも近い国はおそらくオーストラリアです。メルボルンとシドニーに優れた肺移植プログラムがあります。メルボルンではAlfred病院のGregory Snell先生(g.snell@alfred.org.au)に、シドニーではSt.Voncent’s病院のAlan Glanville先生(aglanville@stvincents.com.au)に連絡を取るとよいでしょう。もしかするとニュージーランドにも可能性があるかもしれません。連絡をとるならオークランドのGreen Lane病院のDavid Haydock先生(d.haydock@xtra.co.nz)がよいでしょう。 (回答者: Elbert Trulock / 医学博士、 ミズーリ州 Barnes-Jewish ワシントン大学)
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プロゲステロンの投薬量について

Q.私は月に400mgのデポプロベラ(DepoProvera)の筋肉注射をしています。LAM治療で高い投薬量が使われるのにはどのような医学的根拠があるのでしょうか?

A.私は生殖に関する内分泌学者です。実のところ、あなたの質問に対する良い回答はありませんがよろこんで私の考えをお話します。現在、高用量のプロベラ(Provera(Clinovir))はLAMに最もよい治療法であると言っても良いのですが、しかしながら、その使用を裏付ける有効なデータはほんの少ししかありません。適切な使用量は分かっていませんが、非常に高い投薬量が使われています。一般的な使用目的はエストロゲンの値を抑え、月経をとめるようにすることです。こうするためには、このような高い投薬量は必要ではありません。おそらく薬の値は時間の経過とともにあなたの体の中で高くなると思われます。デポプロベラ(DepoProvera)を使用しているたくさんの女性に最初はよく効きますが、時間が経つにつれ症状が悪化し始めます。残念ながら、体内の薬の値を調べることができません。ですので、これはただの推測にすぎません。現在あなたは非常に高い量を服用しています。もし良くなっているなら、このままの量を使用することをお勧めします。もし問題が起こっているならば、投薬量を減らすべき時です。しばらくの間、薬の使用を完全にやめ気分が良くなるまで体内の薬の値を下げさせ、それから再び低い投薬量から始めることを検討するべきです。
(回答者:John Mershon / 医学博士)

飛行機に乗ることについて

Q.2,3日後に飛行機で帰宅することについて悩んでいます。私はひどい風邪をひき、やや緑がかった痰を伴ったひどいせきもしています。かなり激しく咳き込んだので胸に痛みもありましたが、今夜は良くなったようです。飛行機に乗ることによって引き起こる危険なことがあるかどうか知りたいのです。どんな情報でも構いません。

A.なかなか治らない普段と違った息切れ、肩や上腕部の痛み、あるいは胸膜炎と呼ばれる鋭く刺すような胸の痛みというような気胸と一致する症状がある場合には、我々はLAM患者に飛行機に乗ることを勧めません。あなたの今の症状は気管支炎のようです。そして、家に戻ったら医師の診察を受けるのが賢明です。風邪だからといって飛行機に乗ることがより危険であるというわけではありません。気管支炎では、咳により筋肉が引っ張られ、胸膜炎と違った胸部の痛みを生じることがあります。ですから、私は、あなたが感じている胸の痛みが鈍くて、胸膜炎とは違う場合は飛行機に乗ってもよいであろうとお答えします。もしその痛みが胸膜から来るものであるならば、飛行機に乗る前に胸部X線検査をするのが良いでしょう。
(回答者:Frank McCormack / 医学博士、オハイオ州シンシナティ大学)
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酸素補給について

Q.4階まで階段を上がる検査で、私の酸素飽和度(SpO2)は84%まで下がり、心拍数は75から128に増加します。私は何をすべきでしょうか?
また私は睡眠時の検査を受けたところ、夜間0.5%の間、SpO2は90%以下になりました。眠っている間も酸素が必要でしょうか?

A.あなたの休息時の酸素飽和度はいくらですか。労作時にたびたびこの値に落ちるのでしょうか。もしそうならば、労作時に酸素補給が必要なのかもしれません。定期的に運動をしていますか。もししているならば、運動をしている間酸素補給が必要かもしれません。
肺高血圧症や足首のはれや日中の眠さなどの問題がない限り、夜の酸素飽和度が90%にさがるほんの数分のために医師は普通酸素を処方しないでしょう。
(回答者:Frank McCormack / 医学博士、オハイオ州シンシナティ大学)

胸の痛みについて

Q.胸の痛みについて質問があります。この痛みはただの胸の痛みに過ぎないのでしょうか。それとも、何かが起こっているという事を意味するのでしょうか。時々、わずかに取るに足りないような痛みがありますが、何度かかなり激しい痛みもありました。私は死ぬほど怖いです。私は気胸になっているのではないかと思ったのですが、どのような痛みが気胸の兆しであるのかは分からないのです。

A.胸痛は一般にLAMの女性が経験する症状です。痛みはたいてい鋭く、ほんのつかの間の短時間起こると言われています。その痛みがなかなか治らなかったり息切れが同時に生じたときは、医師は自然気胸の可能性を疑います。これは、通常胸部X線で診断されます。そうでなければ、胸痛の原因がなんであるかはわかりません。それは胸膜の癒着(肺の表面と胸郭の内側にある瘢痕組織)や肺の表面近くにあるブレブ(嚢胞)やその他の原因のためかもしれません。これらの痛みがあるからといって、例えば病気の進行など、何かが起こっているわけではありません。もし痛みが頻繁で激しく起こり悪化するように思えたり、息切れを伴ったりするならば、胸部X線を含む検査を用心のために受けるのがよいでしょう。
(回答者:Jay Ryu / 医学博士 、ミネソタ州 Mayoクリニック)
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診断について

Q.私は腎血管脂肪腫に関する情報を探しています。私は最近、血管脂肪腫のために左腎の摘出を受けました。動脈瘤が破裂し、腎臓の被膜の中で出血したからです。(圧がかかり腎臓を損傷したのです)。私はLAMにかかってるいると考えるべきでしょうか。

A.腎血管脂肪腫は他の病気と関係なく認められることもありますが、肺リンパ脈管筋腫症(LAM)あるいは遺伝性疾患である結節性硬化症(多臓器に良性の腫瘍が現れる)に合併して認められる事があります。あなたが腎血管脂肪腫になったということを考慮すると、これらの可能性のある病気の検査を受けることをお勧めします。LAMのスクリーニング検査をするには一般的に胸部高分解能CT(HRCT)が行われます。結節性硬化症のスクリーニング検査には、まずこの分野に精通している医師に診察をお願いするところから始めます。
(回答者:Jay Ryu / 医学博士、 ミネソタ州 Mayoクリニック)

付記:肺リンパ脈管筋腫症(肺LAM)は、結節性硬化症に伴う場合と、伴わない場合(sporadicLAM散発性LAM)に分けられます。またLAMの病変として、肺病変(肺リンパ脈管筋腫症)と肺外病変(肺外リンパ脈管筋腫症)が報告されています。まれに肺病変の無いLAMの報告もあるようですが、通常、LAM患者さんは呼吸器症状あるいは胸部異常陰影で発症し、殆どの患者さんに肺病変があると思われます。この回答でLAMと書かれているのはsporadicLAMをさしているのだと思われます。
なお、LAMはリンパ脈管筋腫症(Lymphangioleiomyomatosis)の略するのが論理的なのですが、Pulmonarylymphangioleiomyomatosisの略として用いられることもあります。略号、用語の使い方については、若干議論の余地があります。

プロゲステロン、骨粗しょう症について

Q.私はマレーシアで医者をしています。そして、CTスキャン、肺機能検査、胸腔鏡下の肺生検によりLAMと診断されました。診断はロンドンで確認され、繰り返しおこなった肺機能検査では肺拡散能(DLco)のわずかな減少のほかは変化はありませんでした。そのため、私はプロゲステロンでの治療をしませんでした。私はプロゲステロンを始めるべきでしょうか。プロゲステロンの経口薬と筋肉注射とではLAMの治療に同じ効果があるのでしょうか。また考えておくべき最も起こりそうな副作用は何でしょうか。プロゲステロンの合併症を見つけるために、定期的にマンモグラムや骨密度検査やその他の検査は必要ですか。LAMは骨粗しょう症と結びつけて考えられているそうですが、カルシウムの補給をする必要がありますか。FosamaxやビタミンDについてはどうでしょうか。定期的に骨の検査が必要でしょうか。必要であるのならどのくらいの頻度で必要でしょうか。

A.プロゲステロン治療は現在のところ標準的な治療法です。しかし、その効果を立証する根拠はほとんどありません。LAM患者に対する通常の使用量はDepo-Proveraを月に400mg,筋肉注射で投与します。これは非常に高用量で、エストロゲンの値を抑えるのに必要とされる量よりさらに高くなっています。経口薬が同様の効き目がないということはありません。proveraは経口薬で一般的に長期使用が可能です。他のホルモン剤同様、体重減少、月経不順、疲労感といった副作用が起こる可能性があります。多くの女性がこれらの薬の高使用量に十分耐えられますが、なかには長期間使用すると全身が衰弱し疲労を感じる人もいます。薬の投与が長期にわたるとだんだんとproveraの値が高くなり、副作用を引き起こすのだと思います。現時点では、血液中のproveraの測定法はありません。通常、マンモグラムが行われる事があります。 骨粗しょう症について、私はLAM自体が骨量の減少と関連しているかどうか知りませんが、確かにエストロゲンの値を下げるすべての治療法は、骨量の減少と骨粗しょう症を引き起こすでしょう。現時点での最も良い選択可能な治療薬は、カルシウムやFosamax,Actonelのようなビスフォスフォネートでしょう。ビスフォスフォネートはいくつかの消化器に対する副作用があり、ActonaはおそらくFosamaxより使用しやすいと思われます。年に一度、骨密度検査をすることをお勧めします。
(回答者:John Mershon / 医学博士、インディアナ州インディアナポリス)

付記:proveraはメドロキシプロゲステロンでプロベラ、ヒスロンとして日本でも処方されています。Depo-Provera(デポ・プロベラ)はプロゲストロゲン。Fosamaxは日本ではフォサマック、あるいはボナロン、テイロック、オンクラスト等として処方されています。Actonelは日本でアクトネル、ベネットとして処方されています。

肺移植の難しさについて

Q.私は2年前にLAMと診断され、左肺をふさぐために胸膜切除術をしました。二つの質問があります。
1)胸膜切除術後、移植することは可能ですか。
2)もう片方の肺に繰り返し気胸が起こるようなときには、それをただふさいでもらうだけでいいのでしょうか、それとも胸膜切除術が最も良い方法でしょうか。

A.胸膜切除術後に肺移植を受けることはできますが、手術はより難しくなります。肺移植手術の第一段階はもとの肺の除去です。 胸膜切除術後、もとの肺は胸壁に癒着しています(実はこうすることが胸膜切除術の目的です)。そしてこのために切開や除去はより難しくなり、特に出血や乳び漏れや横隔膜の神経(横隔膜をコントロールする神経)への傷といった合併症の危険が増します。 それにもかかわらず、胸膜切除術後のLAM患者(他の病気に関しても)の移植は成功しています。もしあなたのもう片方の肺が気胸になれば、私は、段階的な治療をお勧めするでしょう。最初の気胸には、外科手術を必要とする長期的な空気漏れがないかぎり、化学薬品で胸側胸膜と肺胸膜の癒着を標準の胸部チューブドナレージですることをお勧めします。この治療後、もし気胸が再発すれば二度目の胸腔チューブドナレージ(化学的癒着)を試みるか外科的処置(胸膜切除術または胸膜擦過)が行われるでしょう。一度あるいはそれ以上の保存的治療にもかかわらず、気胸が再発すれば、外科的治療しか残された道はないでしょう。
(回答者:Elbert Trulock / 医学博士、ミズーリ州 Barnes-Jewish ワシントン大学)

付記:ここで述べられている段階的な方法は妥当な治療法と思われます。化学的胸膜癒着、外科手術と治療効果はより確実となり、個々の患者様の気胸の程度に応じた治療法が選択されます。必要であれば早期から外科的治療が選択されますが、患者様が過剰に心配されるあまり、必要な治療が行われないのも問題であると思われます。
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